【2026年独自取材】補整下着の老舗「マルコ」が仕掛ける逆襲劇――店舗回帰とテック融合で掴む、大人の美と資本の行方
マルコ 株式 会社が創業から半世紀近くを経て、いま極めて異例の転換期を迎えている。長年培ってきたサロン対面接客の「濃密な顧客関係」を武器にしつつ、2026年のリテール最前線で鳴り物入りのデジタル改革を突き刺してきた。下着メーカーという従来の狭い枠組みを軽々と超え、ウェルネス市場のど真ん中に切り込むその足取りは、かつて昭和から平成にかけて定着していた閉鎖的なサロンビジネスのイメージを、現場レベルから着実に塗り替えつつある。
街頭の消費が軒並みECや無人決済へと溶けゆく今、あえてフィッティングという極めてパーソナルな身体接触にこだわり抜くマルコ 株式 会社の拠点には、単なる物販ではない熱気が立ち込めていた。記者が都内の旗艦サロンへ足を踏み入れると、AIによる3D立体計測と、熟練ボディスタイリストによるミリ単位の手仕事が、驚くほど奇妙かつ絶妙な調和を見せていたのだ。
「売る」から「整える」へ――RIZAP経済圏で加速する体験型リテールの真髄
スマートフォンの画面を指先でなぞるだけで、翌朝には衣類が玄関先に届く。そんな利便性の極致に消費者が飽和感を覚え始めたのが、この2026年という時代の空気だ。手軽さの代償として失われたのは「自分だけの特別感」である。マルコが現在推し進める店舗戦略は、まさにこの欠落感を正面から埋めにかかっている。
親会社であるRIZAPグループの強力な健康プラットフォームと連動し、同社は単なる下着の販売所から「ボディマネジメントの研究所」へと拠点の再定義を進めた。かつては高額商品のセット販売という印象が先行した時期もあった。だが現在のサロンは様相が異なる。日常の姿勢改善、筋肉の付き方に合わせたアンダーウェアの微調整、日々の体型ログの蓄積。商品を売って終わりではなく、顧客の体型を維持・管理するサブスクリプション的な伴走関係が、強固なリピートを生み出す源泉になっている。
「服を着こなす土台を根本から作り直す」。言葉にするのは容易だが、現場のオペレーションは過酷だ。それでもスタッフが誇らしげにメジャーを操る姿に、店舗というフィジカルな空間が持つ本来の破壊力が凝縮されていた。
3Dボディスキャンと匠の手技が生む、デジタル時代の“不可侵領域”
テクノロジーがどれほど進化しても、人間の肉体は生々しいほどアナログだ。脂肪の柔らかさ、皮膚の張り、骨格の歪み。これらはスマートフォンのカメラで2次元的に捉えられるほど甘くはない。
マルコが2026年の戦略として本格配備した専用スキャナーは、数十秒で体表の凹凸を数十万のデータポイントとして捉える。驚かされるのはその先だ。数値を前にしたボディスタイリストが、手で触れ、肉の流れを確かめ、どの方向にテンションをかけるべきかを判断する。アルゴリズムが弾き出した「正解」を、職人技が「快適な現実」へと落とし込む工程だ。
大手アパレルがこぞって無人化に舵を切るなか、この極端なまでの「人間介在モデル」は逆張りに見えるかもしれない。しかし、結果として返品率はほぼゼロに近く、顧客の定着率は業界平均を大きく引き離している。効率化を突き詰めた先に行き止まった他社が羨望の眼差しを向ける理由が、ここにある。
女性のエイジングケア市場が激変、40代〜60代が熱狂する「身体投資」の内実
日本国内の人口動態は、もはや待ったなしの高齢化を迎えている。だが、いまの50代や60代を「シニア」という一括りの言葉で片付けるのは決定的な誤りだ。可処分所得を持ち、健康寿命の延伸に対して誰よりもシビアに投資を惜しまないアクティブな層が、同社の収益基盤をがっちりと支えている。
「顔のスキンケアには月数万円を投じるのに、面積の9割を占める体型を重力に任せるのは矛盾している」。サロンで出会った50代の女性顧客は、あっけらかんとそう語った。補整下着はもはや「隠すための道具」ではない。服を美しく纏い、背筋を伸ばして歩くための「自尊心のインフラ」なのだ。
ファストファッションの隆盛によって衣服の価格破壊が進んだ結果、差別化の要素が「何を着るか」から「誰がどう着こなすか」という身体性そのものへシフトした。この意識の地殻変動をいち早く捉えたことが、現在の客単価の上昇と口コミによる自律的な集客を後押ししている。
過去の教訓をどう乗り越えたか? サロン商法からの脱却と透明性の確保
時計の針を少し巻き戻せば、サロン型ビジネス特有の課題と無縁だったわけではない。高価格帯の商材、クローズドな空間、熱心すぎる接客。これらがときに消費者の警戒心を呼び、インターネット上のコミュニティで議論の的となってきた歴史は厳然として存在する。
だからこそ、同社が近年徹底してきた「情報のガラス張り化」は見落とせない。料金体系の明文化はもちろん、クーリングオフやアフターフォローのガイドラインをWeb上で徹底的に可視化した。強引な勧誘を排除し、まずは体験と計測の価値を無償または安価で提供するオープンドア戦略への転換だ。
「敷居を下げ、透明度を極限まで高める」。古参のファンを失望させず、同時にSNS世代の新規客を呼び込むための綱渡りは、現場の血の滲むような教育改革によって支えられていた。古い体質を脱ぎ捨てる痛みを引き受けた組織だけが、次の時代を生き残る権利を手にする。
2026年の決算が示すもの:グループシナジーと収益構造のリアル
数字は嘘をつかない。近年のグループ全体の財務データを見渡すと、不採算拠点の統廃合とDX投資の初期コストが一巡し、営業利益率の改善が顕著に現れ始めている。
要因のひとつは、RIZAPグループ内の相互送客が単なるスローガンを超えて実利を生み始めた点にある。コンビニジム「chocoZAP」の膨大なユーザー基盤から、よりパーソナルかつ本格的な身体改善を求める層がスムーズにマルコへと流入する導線が機能し始めた。低価格・大量集客のフロントエンドと、高付加価値・高LTV(顧客生涯価値)のバックエンド。この二重構造が噛み合ったことで、新規顧客獲得のCAC(顧客獲得単価)は劇的な低下を見せている。
資本市場からの視線も変わりつつある。かつてのリテール銘柄という固定観念から、パーソナルヘルスケア銘柄としての再評価が進む。激動の消費環境において、キャッシュフローの安定性と熱狂的なコミュニティを両立させている企業は、決して多くない。
下着の枠組みを解体した先にある、次世代ライフスタイル企業への胎動
マルコが見据える水平線は、もはやランジェリー売り場の枠内に収まってはいない。日中の活動時だけでなく、睡眠時のリカバリーウェア、医療・介護現場での応用を見据えた姿勢サポート衣料など、開発のパイプラインは広がり続けている。
身体の寸法データを数十年にわたり蓄積し続けてきた同社のアーカイブは、見方を変えれば日本女性の体型変遷を捉えた唯一無二のビッグデータだ。この資産をどのように生成AIや新素材開発と掛け合わせ、未病・予防医療の領域へと還元していけるか。企業価値の天井を決めるのは、まさにこのフロンティアの開拓速度にかかっている。
「女性の美を創造する」という創業以来の泥臭い理念は、2026年の先端テクノロジーという翼を得て、かつてない推進力を獲得した。老舗のプライドと新興のハングリー精神が激突する現場から、日本のリテールビジネスが世界に示すべき次なる解が、静かに浮かび上がろうとしている。 (出典: マルコ 株式 会社(Yahoo!ニュース))